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創業される方へ ~創業前のチェックポイント・留意点等~
コロナ禍以降の経済社会の持ち直しや企業の副業解禁の動きにより、「創業」への関心が高まっており、幅広い年齢層において、多様な創業の動きがみられます。今回は、筆者自身の相談事例を踏まえ、創業前のチェックポイントや留意点等について解説します。
創業の現状
創業のきっかけとしては、「もっと収入を増やしたい」の他に「もっと自由に仕事がしたい」、「仕事の経験や知識、資格を生かしたい」などが挙げられます。中小企業白書によると、日本の新規開業率は、1988年度の7.4%をピークに低下傾向をたどり、2000年代は緩やかな上昇傾向でした。その後、2018年度に再び低下傾向に転じ、足元では4%前後となっており、諸外国と比べても低いのが現状です。
創業前のチェックポイント
創業は、思い立ってから実際に開始するまでの間に準備することがいくつもあります。創業前にどれだけ検討し、準備したかによって創業後の経営状況が左右されます。創業前の確認として、主に下表の7つのステップがあります。まずは、公的創業支援機関等が実施する創業セミナー等へ参加してみてはいかがでしょうか。
概要 | 主な内容・ポイント | |
1 | 創業動機や目的を明確にする | アイデア、必要な知識・経験、顧客のニーズ、 時代の流れに合っているか |
2 | 事業概要を固める | 業種(事業の種類)、形態(個人事業か法人か) |
3 | 立地・所在地を決める | 創業立地の選定、内装・設備、周囲の経済環境 |
4 | 営業方針・戦略を立てる | 顧客層、商品・サービスの内容、価格・販売・ 仕入方法、体制 |
5 | ビジネスプランを立てる | 事業計画書、資金計画表、損益計算書、 返済計画表 |
6 | 創業資金を調達する | 自己資金、制度融資・補助金の利用 |
7 | 創業に伴う届出をする | 開業届、青色申告申請、法人設立登記 |
ビジネスプランの立て方
ビジネスプランは、事業計画書、資金計画表、損益計算書、返済計画表の4つが柱となります。作成する際の主なポイントは、以下のとおりです。
(1) 事業計画書
事業の概要や特徴、自身の経歴やノウハウを記載します。特に事業の内容を明確化しつつ、実現可能
性の程度や独創性についてはしっかりとした根拠を織り込むことが重要です。
(2) 資金計画表
創業に必要な資金を見積もり、自己資金を含めた資金調達額を確認します。必要資金は、設備資金と運転資金に分けて算出し、自己資金と借入金のバランスを考え、ゆとりを持った資金計画を立てることが大切です。なお、自己資金は、創業資金の3分の1程度を用意するのが目安とされています。
(3) 損益計算書
売上高、売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益等の主要な数字の見通しを作成します。特に売上高の根拠については、客観的に記載し、市場や商圏調査を踏まえた顧客ニーズの裏付けも求められます。
(4) 返済計画表
返済財源と借入金返済額、現預金残高の推移を記載します。黒字になっていても、支払いに回す資金が不足すると資金繰りが苦しくなります。そのため、月ごとの資金繰り表の作成をお勧めします。
留意点
創業の失敗例を見ると、売上高の不振に加え、事業の内容や資金管理等が不十分であったことや、創業後に発生した各種問題に対して適切な改善策を講じることができなかったことなどが挙げられます。事業に集中しながらも、専門家に助言を求めたり、老後を含めた家計の見直しを図ることも重要です。
まとめ
今回は、創業に関わる相談事例に基づき解説しましたが、事業内容などは人それぞれ異なります。各種創業支援機関では、時代の変化をビジネスチャンスと捉えて、チャレンジする創業者の育成や支援施策等に積極的に取り組んでいます。また、商工会議所や市区町村の相談窓口に加え、AIを活用した起業相談チャットボットやWebサイトの活用等、様々な方法で相談することができるようになっています。創業を検討されている方は、活用されてみてはいかがでしょうか。- ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
- ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。