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2024年10月号(1)
資産運用
CFP®認定者 坪井 豊明

リタイアメントプランニングとしてのNISA活用術

 2014年1月にNISA(少額投資非課税制度)が始まって10年が経過しました。2024年1月からは、新制度として内容が大きく拡充され、NISAの口座開設数や買い付け額は順調に伸びています。NISAは、主に20~40代の長期間資産形成が可能な世代が活用するものと思われがちですが、人生100年時代といわれる昨今、50代以上の世代においても活用できる制度となっています。今回は、資産運用経験の少ないリタイアメント層向けにNISAを活用するポイントや注意点について解説します。

リタイアメント層はNISAを始めたほうがよいか

 リタイアメント層とひと言で言っても、定年退職や早期退職した人、退職後にセカンドキャリアを形成した人、生涯現役の人など様々です。
 いずれにしても、リタイア後の暮らしを具体的にイメージし、老後生活を見据えたライフプランを考えることが先決です。次に、保有資産や将来受け取る年金額などを把握しましょう。100歳までの生活費の総額、車の買い替えや家のリフォームなどのイベント費用、医療・介護費用などの支出を計算し、キャッシュフロー表を作ります。住宅ローンなどの返済が残っている場合は、住宅ローンの返済を優先するなど、お金の使い方の優先順位を検討することをお勧めします。余剰資金があり、資産形成の必要があれば、NISAを活用するのも選択肢の1つとなります。

NISAのメリットと注意点

 NISA制度の最大のメリットは、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益が非課税になることです。新制度となり、年間投資枠の拡大や非課税保有期間が無期限化されるなど、さらに内容が大きく拡充されています。
 一般的に、資産運用は、運用期間が長いほど価格の振れ幅が小さくなり、安定的な収益が期待できるといわれていますが、リタイアメント層は運用期間が短くなるため、期待していた利益が得られずに損失となった場合、どの程度までの損失であれば受け入れられるのか、という度合い(リスク許容度)を把握し、その範囲内で投資を行うことが重要です。また、相場の短期的な動きに一喜一憂せず、比較的安定した運用方針で臨むことも大切です。

資産寿命を延ばすことが重要

 60代以降のリタイアメント層は、年金が主な収入源となり、これまで積み上げてきた金融資産や退職金を取り崩しながら生活することになるため、資産寿命を延ばすという考え方が重要です。手元にある余裕資金をただ取り崩すのではなく、NISAなどを活用して、増やしながら取り崩すことで、資産寿命を延ばすことができます。
 資産の取り崩しについては、民間サイトなどで、資産運用を行いながら取り崩した場合と資産運用をせずに、ただ取り崩した場合を比較し、毎月いくらずつ使うと何年で今ある資産が枯渇してしまうのかをシミュレーションできます。
 また、「100-年齢=リスク資産の割合(%)」という考え方があります。年齢が若いうちは一時的に損失が出ても、労働による収入や長期の金融資産保有により、回復も見込めますが、年齢を重ねると、時間を味方につけることが難しくなるため、リスクの大きい資産の割合を少なくしていくという考え方です。投資先を決める際の参考にしてみてください。

まとめ

 NISA制度は、幅広い年齢層で活用されています。リタイアメント層においては、自分自身のライフプランの充実に加え、次の世代に資産を残す、という観点もあります。投資や経済を学ぶ良い機会とし、シニアライフの充実を考えてみてはいかがでしょうか。

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