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ポートフォリオに外貨建て資産を組み入れよう
ご自身のポートフォリオに、どのくらい外貨建て資産を組み入れていますか。経済を見通すうえで重要な指標となる政策金利は、2022年以降、米国で大きく上昇し、高金利を生かした外貨建て金融商品の取り扱いも増えています。中でも米ドルは、世界の基軸通貨であり、取引量が多いうえに流動性も高い通貨です。今回は、米ドル建て資産を例に、外貨建て資産を保有することのメリットと注意点について解説します。
米ドル建て資産を保有するメリット
米ドル建て資産を保有するメリットは、主に以下の2つです。
(1)高金利
日本の政策金利は、日本銀行が2024年3月に17年ぶりの利上げに踏み切り、8月にも追加利上げを行い、現在0.25%です。一方、アメリカの政策金利は5.5%です。政策金利は、金融機関の預金金利などにも影響を及ぼすため、米ドル建て資産を保有することで高金利のメリットを享受することができます。例えば、期間1年の米ドル建て定期預金は、金利4%(年率・税引前)程度で預け入れすることができ、円定期預金の金利0.025%(年率・税引前)との差は歴然です。
また、預金だけでなく、証券会社や生命保険会社等で購入できる米ドル建て債券や米ドル建て保険といった、高金利を一定期間固定できる金融商品もあります。
(2)円安に伴う資産の目減りに対応できる
この2年間で、米ドルと円の為替レートは1ドル115円ほどから160円を超える水準まで大きく円安に振れました。円安とは、他国通貨に対する円の資産価値が下がっていることを意味しますが、例えば、1ドル115円の時に米ドル建て資産を100万円分預け入れた人は、1ドル160円の時に円に戻すと140万円ほど(金利、税金等は加味せず)に増えています。つまり、円安が進み円の資産価値が下がっても、米ドル建て資産を保有することで、資産価値の目減りをカバーすることができます。外貨建て資産を保有することは、資産を守るという観点からも将来の備えにつながる大きなメリットの1つです。
米ドル建て資産を保有するうえでの注意点
一方、米ドル建て資産を保有するうえでの注意点もあります。
米ドル建て資産を保有している途中でどうしても資金が必要となり、解約しなければならない場合、その時の為替レートでドルを売却することになります。例えば、1ドル160円の時に米ドルに替えて預け入れ、1ドル115円の時に円に戻してしまうと1ドル当たり45円の損失が確定します。高金利で米ドル資産を増やしても、購入時の為替レートより円高時に売却すると元本割れをすることもあります。
また、円を米ドルに交換する際と米ドルを円に戻す際には、為替変動リスクに加え、別途、金融機関により定められた為替手数料がかかるため、金融機関や商品の選択、解約のタイミングには注意する必要があります。
為替変動リスクに対応する方法
為替変動リスクは、分散投資といって投資する金融商品の種類や購入のタイミングを分けることでリスクを低減させる考え方があります。為替変動は常に起こり得るため、特徴の異なるいくつかの金融商品を組み合わせ、購入のタイミングを分けるのが有効です。
また、外貨購入時より円高になった場合に円を買い戻さなければ損失が確定することはなく、解約手数料も発生しないため、外貨建て資産をそのまま保有し続けるという選択肢もあります。
まとめ
保有資産に米ドル建て資産を組み入れることは、分散投資の手段であり、円の価値が目減りした時に資産を守れるという点で非常に有用な方法です。一方、為替相場は想定どおり動くとは限りません。また、中途解約時の為替手数料などを考慮すると、長期間保有できる資産で行うことが重要です。金利の動向に注意しながら、ご自身のポートフォリオに外貨建て資産を組み入れてみてはいかがでしょうか。
- ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
- ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。