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2023年6月号(2)
保険
CFP®認定者 山田 圭子

働けないときの収入ダウンに備えた民間保険の活用法

「もしケガや病気で働けなくなった場合どうしよう」という不安は誰にでもあると思います。そのような不安に対して公的な保障で足りない分を、生命保険や損害保険で備えようと考える人も増えています。生命保険文化センターの「2021年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、働けなくなるリスクに備える保険や特約の世帯加入率は18.4%で、前回2018年度調査の12.0%と比べて加入率は上昇しています。そこで今回は、就業不能に備えた民間保険の活用法について説明します。

まずは公的保障を確認

主な保障制度は以下のようなものがあります。

傷病手当金 健康保険 業務外の事由のケガや病気で療養のため休んだ場合に、4日目以降1年6カ月まで、標準報酬日額の約2/3が支給される。
休業給付 労災保険 業務及び通勤によるケガや病気で休んだ場合に、4日目以降に1日あたり給付基礎日額の80%程度が支給される。
障害年金 公的年金 初診日に国民年金や厚生年金に加入している人が、原則、1年6カ月後から請求でき、支給要件に該当すれば、その等級に合わせて支給される。

健康保険や厚生年金に加入している会社員の方は、ある程度公的保障でカバーできます。一方、国民健康保険には傷病手当金がないため、自営業者の方は働けなくなった場合の備えがより必要です。

どんな保険商品があるのか

 生命保険には就業不能保険(就業不能特約)、損害保険には所得補償保険があります。就業不能保険の場合、最長60~70歳まで月々5~50万円の給付金、所得補償保険の場合、1~2年間程度の短期間で現在の収入の50%~70%で保険金額を設定するのが一般的です。保障(補償)の期間や金額、範囲はもちろん、保険料なども保険会社や個別の保険商品ごとに異なるため、よく内容を確認して契約するようにしましょう。
 商品を選ぶ際の注意点の1つは精神疾患が保障(補償)の対象かどうかです。うつ病などで働けなくなった場合は対象とならないものもあるため、契約前に確認しましょう。もう1つは、保障(補償)を受けることができない免責期間の長さです。就業不能保険は60日や180日など、所得補償保険は7日などが一般的ですが、それぞれ商品により異なります。

状況に合わせた保険の活用法

 会社員の方であれば、有給休暇の取得と最長(通算)1年6カ月の傷病手当金を受給(有給休暇との併給は不可)でき、その後所定の障害等級に認定された場合は障害基礎年金、障害厚生年金を受給することもできます。傷病手当金や障害年金では不足する部分を補えるように、保険で備えておくとよいでしょう。
 一方、自営業者の方は、すぐに収入がダウンしてしまううえ、傷病手当金も障害厚生年金もないため、早めに保険金(給付金)を受け取れるタイプの所得補償保険と、長期間しっかり保障してくれる就業不能保険の両方で備えておくとより安心です。ただし、大きな保障(補償)を得るためには保険料も相応にかかります。保障(補償)内容と保険料負担のバランスを考えることが大切です。

まとめ

もちろん働けなくなったときの備えは保険だけではありません。貯蓄やその他の資産が十分ある方もいらっしゃると思います。まずは自身が加入している公的保障や家計状況を把握し、そのうえで不足する部分があれば、それを補う保険を検討してみましょう。不足する部分がわからない方や十分な貯蓄等があっても不安な方は、FPに相談し家計の不安を「見える化」してみてはいかがでしょうか。

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